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2014年9月8日月曜日

時代はまさにソーシャルゲーム戦国時代

「怪盗ロワイヤル」という言葉を覚えているだろうか。2010年頃に爆発的な人気となったソーシャルネットワーキングサービス上で提供されるゲーム、いわゆる「ソーシャルゲーム」である。TBS系列ではこのゲームをモチーフとしたドラマも制作された。多分誰もが1度は耳にしたことがあるはずだ。しかし、最近は全くと言っていいほど耳にしなくなった。怪盗ロワイヤルだけではない。当時の二大ソーシャルゲームサイトであった「モバゲータウン(現在・Mobage)」「GREE」が提供するゲームをやっている人を今ではほとんど見かけることが少なくなってしまった。
怪盗ロワイヤルとは、自分が怪盗になったという設定でアバターを強化してミッションを進めていったり、他の怪盗が所持しているお宝を狙ってバトルを仕掛けたりするというゲームである。ミッションやバトルを優勢に進めるためには武器や防具などを買いアバターを強化していくというシステムだ。同じようなシステムのゲームとして、怪盗ロワイヤルをモチーフにした「戦国ロワイヤル」や「帝国ロワイヤル」などがある。このロワイヤルシリーズのシステムを簡単に言うと「自分のアバターを強化する」というシステムである。この頃はロワイヤルシリーズをきっかけに同じようなシステムのソーシャルゲームが一気に増加した。
そんななか新しく登場したシステムは「キャラを強化する」というタイプのシステムである。代表されるゲームとして「アイドルマスター シンデレラガールズ(通称・モバマス)」や「ONE PIECEグランドコレクション(通称・グラコレ)」「探検ドリランド」などがある。これらのゲームのシステムは、キャラ(カードなど)を手に入れて、そしてそのキャラを育成し経験値を貯め、レベルアップをしてミッションやバトルに挑むという流れである。このシステムの登場で先ほど説明した「自分のアバターを強化するタイプ」のシステムのゲームの人気はほとんどなくなってしまった。いったいなぜこんなすぐにユーザーの心が移り変わってしまったのだろうか。そしてなぜ「キャラを強化する」タイプのシステムのほうが人気が出たのだろうか。その要因の一つに「キャラ愛」ということがある。「キャラ愛」とは、特定の作品の特定のキャラのことが 好きという感情から生まれたもので「キャラへの愛情」の略だと言われる。そのキャラ愛が生まれることにより「そのキャラを育てたい!」「そのキャラを強くしたい!」と思うようになる。現にモバマスやグラコレはそれぞれ漫画やアニメでキャラクターの人気が確立されている作品である。もちろんロワイヤルシリーズもその流れに乗ろうとはしていたが、「アバターを強化する」というシステムが確立されており、原作がなくゲームそのものがオリジナルのソーシャルゲームはその要素をうまく取り入れることができなかった。
しかし、「キャラを強化する」というシステムの登場により浮き彫りに出た問題もある。俗に言う「課金問題」である。このシステムのゲームで、欲しいキャラを手に入れるためには「ガチャ」と呼ばれるものを使い、手に入れる方法が主流である。だが欲しいキャラを手に入れようとガチャをしても手に入れることはまず難しい。無料ガチャと呼ばれるものもあるが、そこから手に入れられるキャラは課金をして手に入れられるキャラと比べると入手しやすい分ステータスが強い訳ではない。強いキャラ強いカードを手に入れるためには課金用のガチャをまわすしかないわけだ。
課金問題がニュースなどで社会問題となっているなか、ケータイにも大きな変革が起きた。スマートフォンの流行である。モバゲーやグリーなどの人気が落ちてきたのもスマホブームのせいといっても過言ではない。そんななか、これまでのソーシャルゲームの人気の衰えと入れ替わるように人気が出たのが「パズル&ドラゴンズ(通称・パズドラ)」だ。ゲームのシステムとしては「キャラを強化する」システムとほとんど同じである。2013年の流行語大賞のノミネートに入るほどの爆発的な人気となったパズドラだが、なぜ従来のソーシャルゲームに比べパズドラがここまで話題になったのであろうか。
その大きな理由の一つにガラケーとスマホの仕様の差がある。ガラケー、いわゆるガラパゴス携帯とスマートフォンの決定的な使用の差として「テンキーがあるかないか」ということがある。スマホでメールなど文字を打つ機能を使う場合、テンキーの代わりとして画面上に文字が配列してあるのをタッチして文字を打ち込む。今までどおり文字を打つことに関してはほとんど問題ない。むしろ慣れるとこっちのほうが打ちやすいという人もいる。しかし、ブラウザ上でソーシャルゲームをする場合この仕様変更は致命的だった。あまりソーシャルゲームをやる人はわからないかもしれないが、ソーシャルゲームユーザーはテンキーを使ってミッションやバトルを進めることが多い。例えば5 のボタンを押すことによってミッションを進ることができる場合、ブラウザの読み込みが100%完了する前に5ボタンを押すことによって次の画面に進むことができる。つまり5のボタンを連打することによって簡単にミッションを進めることができる。裏技というほどではないが、こういう小技をしているソーシャルゲームユーザーはかなりいたはずである。それに比べてスマホの場合はこれができない。画面をタッチして進めなければいけない性質上ガラケーとは違いブラウザの読み込みが完全に完了するまで待たなければ次の画面に進むボタンが画面上に表示されない。このことだけ見れば「こんな小さなことでユーザーの心は離れていくのか?」と思う人もいるだろうが、プレイしているユーザー側としてはこの 小さな変化でやる気が大きく変わってしまう。では、なぜそんな風潮のなかでパズドラは人気を集めたのだろうか。と、本題に入る前に一つだけ説明しておかなければならない事実がある。そもそもパズドラは正式には「ソーシャルゲームではない」ということだ。開発者によると、イメージとしては「ゲーム+ソーシャル」ということらしい。このことをふまえた上で本題に戻るとしよう。なぜここまでパズドラが人気になったのか。その要因の一つとして「ソーシャル+新しいゲーム性」という要素がある。この「ソーシャル+新しいゲーム性」の「ソーシャル」の部分は従来のソーシャルゲームが持っていた要素だが、それに「新しいゲーム性」という要素が加わった。パズドラでいうところの「パズルゲーム」の 要素である。パズドラのほかにも「新しいゲーム性」をもったゲームとして「魔法使いと黒猫のウィズ(通称・黒ウィズ)」や「ラブライブ スクールアイドルフェスティバル(通称・スクフェス)」などがある。黒ウィズにおける「クイズゲーム」の要素や、スクフェスにおける「音楽ゲーム」など、ユーザーの多くがスマホに移行したことによって、今までのガラケーではスペックの都合上できなかった「ゲーム性の探求」ができた。だからこそ、パズドラや黒ウィズ、スクフェスのようなゲームの人気が出たのではないか。
ソーシャルゲームがここまでスマホのゲームの独壇場になっているなかで、2013年人気になったゲームがある。「艦隊これくしょん(通称・艦これ)」というゲームだ。艦これとは、女の子に擬人化している旧日本の艦船を集めて進めるというソーシャルゲームである。このゲームには従来のソーシャルゲームとの決定的な違いが二つある。まず一つ目はプレイ推奨環境が今までのケータイ・スマホではなくパソコンであるということだ。もちろんスマホなどでもプレイできないわけではないがパソコンでやらなければ動作がうまくいかずスムーズにプレイできない。流行がガラケーからスマホへ移ったのと同時に、「パソコンでやるソーシャルゲーム」の人気にも火をつけた。「ケータイで やれたほうが手軽じゃん」と思うかもしれないがパソコンでやるからこそのメリットもある。先ほどスマホのゲームが流行った背景には「ガラケーにはできないゲーム性」ということを説明した。だが、パソコンにはスマホを上回る機能があり、携帯機でやるよりも運営側がより多くのユーザーの要求を満たすことができる。そうしたユーザーの要求を満たすことにより、このゲームのやりこみ要素が増えてくる。このやりこみ要素は二つ目の違いと深く関わっている。その二つ目の違いは「新しいシステム」のゲームであるということである。このゲームは従来のシステムの「課金しないと入手不可能なもの」が基本的に存在しない。つまりユーザーの努力次第、やりこみ次第で楽しむことができるということだ。 もちろん課金するシステムも存在しているが、従来の有料ガチャのようなシステムは今のところはない。この新しいシステムがヒットし、艦これはアニメ化や漫画化になるなどマルチメディア展開をすることができた。
ここまでくると「次に流行るのは何か?」となってくる。ガラケー、スマホ、パソコンと様々な端末で展開されているソーシャルゲーム業界。次はどんな会社がどのようなシステムで、何の端末で新しいシステムを作ろうとするのか。しかし、数年前一時代を築いたモバゲーやグリーがそれを指をくわえて見ていていいのだろうか。両社にはこの状況を打破する新しい策があるかどうかはわからない。だが時代は常に新しいゲームを求めていることには違いないはず。次に天下をとるソーシャルゲームはなんなのか、「ソーシャルゲーム戦国時代」はまだまだ続きそうだ。

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